「オシムを連れてきた男」祖母井秀隆に聞いた、日本が強くなるための人と人が繋がるサッカーの話

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リベルタ学舎さん主催のイベント「ミッション神戸」でイビチャ・オシムを日本に連れてきた男、祖母井秀隆さんのお話を聞いてきました。

ミッション;神戸(10)祖母井秀隆さん(元京都サンガGM) | Facebook

 

古くから伝わるフットボールの三か条と言えば

さて、ここで問題です。
古くから伝わる「フットボールのしきたり三カ条」と言えば、
なんでしょう?



正解は…

  1. ノーサイド
  2. アフターマッチファンクション
  3. キャプテンラン

この3つです!

これ知ってました?
僕は知らんかったです。

ノーサイドは試合が終わったら敵味方の区別なく共に戦った仲間だ互いを讃え合うこと。

アフターマッチファンクションはホームのチームが相手チームを招いて食事をし談笑を交わすこと。(そういう場所がスタジアムやクラブハウスに準備されてある。)

キャプテンランは監督ではなくキャプテンが中心となってプレーヤー自らが試合やチームを切り盛りする。(runには経営、操業、運営という意味がある)

 

祖母井さんが紹介してくれました。

 

基本的にこれはラグビーで今も伝わる伝統なのですが、サッカーとラグビーはそもそも同じfootballから派生して生まれたスポーツです。

アフターマッチファンクションはサッカーでもイングランドやイタリアでは行われているみたいです。

 

イングランドでは下部リーグの小さなクラブでも独自のスタジアムを持っていますが、そんな小さなスタジアムでさえ、選手用のプレイヤーズ・ラウンジと呼ばれるパブ/スポーツバーが備えられています。試合終了後に両チームの選手、家族、友人などがひとつのバーで一緒にお酒を飲みかわします。私もマンチェスター・シティをはじめとし、何クラブかのプレイヤーズ・ラウンジに入れてもらったことがあります。招待して頂いた際に、チケットと一緒にプレイヤーズ・ラウンジのチケットが入っていたこともあります。

アフターマッチファンクション|Footie life より

 

祖母井さんもドイツの4部リーグでプレーしているときにアフターマッチファンクションをやってたそうで、クラブハウスでお酒を飲みながらサポーターのおばあちゃんに一喝されたエピソードを話してました。

祖母井さんはジェフ市原グルノーブル京都パープルサンガGMをされていたので、クラブが地域と繋がるという意味で、特にアフターマッチファンクションの重要性をお話されていました。

サッカーは人を成長させるものである

僕はこの3つのfootballの伝統を聞いたときに、素敵やなと思いました。

試合中は真剣そのもので、敵と味方に分かれるけど、試合が終わったら一人の人間として共に繋がろうという精神。

・サッカーがうまくなる
・試合に勝つ
・大会で優勝する

ということには、直接関係ないかもしれない。
悔しくて相手を讃えるなんてできないかもしれない。

でも、試合ができてるのも相手のおかげであり、悔しい気持ちを感じられるのも、それをバネにしてまた努力をすることも、すべて相手あってのことです。

合気道にも通ずるものがありますね。

この互いに讃え合うという心は一人の人間として生きていく上でとっても大事なことです。

 

サッカーは楽しいし、面白い。
さらに、人を成長させるものである。

 

もし、そこまでサッカーの価値を高めることができれば、サッカーをする人はもちろん増えるし、サッカーから日本の教育や文化を変えていけるんじゃないかと思います。

もちろん武道やラグビーから学んでもいいですが、サッカーはビジネスとしての投資先になっているので、たくさんの人に触れてもらう機会が圧倒的に多いです。

だから、勝利至上主義、エンターテイメント性、マネーゲームを逆手に取って、たくさんの人を巻き込みながら日本を変えていく力があるのではないかと思います。

そして、それはfootballの原点に立ち返ることで達成することができるんじゃないかと思います。

元フランス代表キャプテンのジャン・ピエール・リーブの有名な言葉に次のようなものがある。

ラグビーは子供をいち早く大人にし、大人にいつまでも子供の魂を抱かせる」

第4回 文化としてのラグビーより

 

ちなみに日本のラグビーではアフターマッチファンクションも行われ、秩父宮ラグビー場は選手のお風呂が一つしかないそうです。

 

サッカーはプレーしてナンボ

トークショーのあと祖母井さんに、

「日本代表がW杯で優勝するには何が必要でしょうか?」

とお聞きしたところ、

 

フットボールフォーオールの精神

というお答えを頂きました。


長らく言われていることですが、

エリートを生むためにたくさんの子どもたちが犠牲になってるのが今の日本のサッカー文化ですね。主に高校の部活ですが、選手を抱えるだけ抱えて、ベンチにすら入れずに満足にプレーできない子どもたちがたくさんいます。

もちろんレギュラー争いはありますし、試合に出れないこともあるでしょう。でも、サッカーを楽しむということは絶対に失われてはいけません。

サッカーはプレーしてナンボです。

競技人口が何万人と言ったって、プレーをしていない子どもがたくさんいる。そこを変えていかないといけない。そのためには指導者が変わっていかないといけない。サッカー協会も変わっていかないといけない。

そういうお話がありました。

このエリートを養成する文化は戦後からの急激な復興を背景にした価値観からくるもので、祖母井さんも指摘されていました。

サッカーの足を引っ張る戦後からの価値観

戦後からの日本の復興は世界の中でも類を見ないものだと思います。しかし、それが頭打ちになりました。

バブル、フー!
地価上昇、ひゃっほ~い!
終身雇用、バンザーイ!

そんな時代はあったのかっちゅう話です。

サッカーも一緒です。

ジーコがいた、
リネカーがいた、
スキラッチがいた、
リトバルスキーがいた、

ブラジルの10番からワールドカップ得点王まで、
今で言うなら、ジェラードも、デル・ピエロも、シャビも、ベッカムも日本にJリーグに来てた時代です。

そんな時代はあったのかっちゅう話です。

Jリーグもサッカー日本代表も頭打ちになりました。

そこを変えていくには、資本主義満開の文化ではなく、

フットボールの伝統三か条

フットボールフォーオールの精神

この2つが物語る、人が互いを讃え合い繋がる文化をサッカーで醸成してくことだと思います。

 

祖母井さんのGMという立場での、

地域

繋がり

という視点のサッカーの話は、普段プレーや指導の情報ばかりを追いかけている僕としては刺激的なお話でした。

GMのシビアなお金の話を具体的な金額まで聞けたり、ボビー・チャールトンに指導者講習のために連れてきたときの裏話とかも面白かったです。

サッカー界を変えていこうしてる人の話はもっと聞きたいですね。

主催されたリベルタ学舎さん、
祖母井さん、
ありがとうございました。

 

このブログは日本代表がW杯で優勝するまで続きます。

 

祖母力 うばぢから オシムが心酔した男の行動哲学

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P.S.

一番に衝撃的だったのは、

「こういう話ができる指導者や経営者がほとんどいない」

ということ。