日本代表vsイラク 「苦手なサッカーに取り組みながら結果が求められる苦しい日本代表」【ロシアW杯アジア最終予選】

f:id:tsuttsun0223:20161010111331j:plain

 

最終予選の初戦、ホームでまさかの黒星スタートを切った日本代表はタイとの試合で地力を見せたものの、「なんだかなー」というモヤモヤが残ったまま一ヶ月が過ぎました。

 

teppenfc.hateblo.jp

teppenfc.hateblo.jp

 

W杯の最終予選はいつも「負けられない戦い」と煽って、サッカーがいっぱい露出されて、お祭り騒ぎではあるんですが、

 

全体の雰囲気としては

「この監督で大丈夫?」

「W杯出れるよね。。。」

とちょっと試されてる感のある今の日本代表。

 

試合自体は山口蛍選手の劇的な逆転ゴールで2-1で薄氷の勝利でしたが、本田選手が試合後に気になるコメントを残しています。 

監督と話す機会が僕だけではなく、みんな増えてきているし、ある程度、歩み寄っていくのが大事だと思います。やりたいことはもちろん伝えながら。監督がやりたいことは貫きながら。そこはちょっとずつ変わっていくと思います。

 このコメントに焦点を当てて、イラクとの試合をレビューしていきます。

 

ハリルがロシアW杯までにやりたいことは世界で戦うために必要なこと

ハリル監督になってから「縦に速い攻撃」が意識されるようになりました。

 

それによって、FWは相手DFの背後に走り込み、そこにロングキックやサイドから斜めのクロスを蹴る回数がめちゃくちゃ増えています。

 

今までの日本代表はもっとボールを大切に扱い、攻め急がずに、ゆっくりと相手の隙を伺うサッカーをしてきました。

 

ただし、それでは世界の国々には対抗できない。

パスを回しながら相手を伺うサッカーは上には上がいて、日本代表が回される側になるし、日本の繋ぐサッカーでは強豪国の堅牢な守備をぶっ壊すことができません。

 

そこで、ハリル監督は世界で勝つために、

  • 相手の守備が整っていない間に攻め切って得点するカウンター
  • 相手の体の前ではなく背後にボールを送り込む姿勢
  • 相手に自由に攻撃をさせないアグレッシブな守備
  • 相手が攻撃に転じた瞬間のハードな守備

をベースにチームを作っています。

 

いくら世界のトップを争う国々でも、相手もただの人間だから、隙のある瞬間や嫌なところでどんどん勝負しようという心意気です。

 

その勝負していく場面は、いつだってギリギリのところになるので、

  • ギリギリの勝負の中で相手に競り勝つ力

がとても重要になります。

これが、俗に言う、デュエルってやつです。

 

冒頭の本田選手のコメント、

監督と話す機会が僕だけではなく、みんな増えてきているし、ある程度、歩み寄っていくのが大事だと思います。やりたいことはもちろん伝えながら。監督がやりたいことは貫きながら。そこはちょっとずつ変わっていくと思います。

 

この「監督がやりたいこと」というのは、ハリル監督が考える世界で勝つためには何が必要かという現実的な挑戦のことであり、まさに今そこに取り組んでいる真っ最中といったところです。

 

もう一度おさらいします。

 

ハリルがやりたいサッカーは、

  • 相手の守備が整っていない間に攻め切って得点するカウンター
  • 相手の体の前ではなく背後にボールを送り込む姿勢
  • 相手に自由に攻撃をさせないアグレッシブな守備
  • 相手が攻撃に転じた瞬間のハードな守備

この4つを軸にしたサッカー。

 

そして、プレーの中の意識として、

 

「デュエル」

 

を重要視しています。

 

これはロシアW杯までずっと取り組んていくことになります。

 

本田選手の言うやりたいことは日本人が好きなやつ

ではでは、本田選手のやりたいことってなんなんでしょうか。

監督と話す機会が僕だけではなく、みんな増えてきているし、ある程度、歩み寄っていくのが大事だと思います。やりたいことはもちろん伝えながら。監督がやりたいことは貫きながら。そこはちょっとずつ変わっていくと思います。

 

日本のサッカー文化は、今のところ「テクニックこそサイコー」が中心にあります。 

Jリーグ開幕から、良くも悪くもブラジルの劣化コピーを昔から引きずり倒していて、指導者の視野が狭いため、子どもたちもトラップ&パス+ドリブルに流れる傾向が強いです。

 

 

本田選手の試合後のコメントを借りると、

 

「もっと相手がじれるぐらいやりたいんですけどね。」

 

「本当はこっちが向こうをバカにしたいんです。・・・(中略)・・・それは僕やヤットさん(遠藤保仁)の真骨頂なので。・・・(中略)・・・アジアレベルで言えば、徹底的に相手をバカにするようなプレーは得意としているところです。」

 

 これが、本田選手のやりたいことであり、そのまま日本のサッカーの基盤にあるものです。

 

テクって、テクって、相手をバカにして圧倒する

 

は、日本人が大好きなサッカーで、それが最上だという文化があります。

 

日本代表は日本人の苦手なことにめっちゃ挑戦している

前置き長くなりましたが、

 

ハリル監督のやりたいサッカーは、

 

一瞬の隙を見逃さず一点をもぎ取る「戦う」ことを軸にしたサッカー

 

日本のサッカーは、

 

テクって、テクって、相手をバカにして圧倒する「魅了」するを軸にしたサッカー

 

と、言えます。

 

 

ハリル監督のやりたいサッカーというのは、とても難しいサッカーです。

 

攻撃でも守備でも常に高い緊張感を持って、
相手との距離の近いところで攻守が目まぐるしく変化していき、
スピードを落とさずに一瞬の隙を見逃さない。

 

頭も身体も休める暇はなく、トップスピードの中ででプレーすることを求められるサッカーです。

 

これは日本でサッカーをやってきた人は、とても苦手です。

 

テクって、テクって、相手をバカにして圧倒する「魅了」するを軸にしたサッカー

 

は、「スッゲー」ってなればいいので、求められません。

 

得点力不足

決定力不足

 

ってよく言われてましたけど、日本のサッカー文化がそういうもんじゃないからしょうがない。

 

挑戦することよりも置きに行く

結果よりもプロセス重視

美しいか、魅せられたかどうかが大切

 

だから、

 

速くプレーしなくていいし、

泥臭くなくていいし、

うまいことやればいいし、

ぶつかるの好きじゃないし、

 

ってのが日本人です。

 

なので、今の日本代表はずっとやって来なかったこと、すごく苦手なことに挑戦しています。

 

アジアレベルで言えば、徹底的に相手をバカにするようなプレーは得意としているところです。でもそれは今、求められてない。実際に怖い攻撃をもっとたくさん増やしていこうというのがこの代表のテーマなので。それはそれで、僕は前向きにチャレンジの気持ちで取り組んでいるし、実際、今までの自分になかったところに挑戦できていることにはやりがいを感じているので、否定的ではないです。

 

 と、本田選手も語っています。

 

僕はこれはめちゃめちゃすごいことだと思っていて、 

 

日本代表っていうたまにしか集まれないチームで、自分のチームのプレースタイルとかレギュラー争奪戦とかがある中で、今まで日本人として取り組んでこなかったことに大人になってから、世界で勝つために代表監督の元で挑戦する。

 

これってめちゃくちゃすごくないですか?

いやー、ほんと大変すよ。

そもそも移動時間もあってコンディション調整も大変やし、最終予選の試合の中でちょっとずつ良くしていく感じ。

 

実際、9月のUAE戦とタイ戦と比べれば格段に良くなっていました。

 

で、イラクとの試合はどうだった?

ここまで、今の日本代表はどうなのかって話だったんですが、イラク戦では苦手なことに一生懸命チャレンジしながら、試行錯誤しながら、決して崩れずに結果を手繰り寄せる姿がとても印象的でした。

 

メンバー的にも、

 

テクって、テクって、相手をバカにして圧倒する「魅了」するを軸にしたサッカー

 

これに切り替えることはできるけど、あえて速い攻撃に挑戦していました。

 

前回のホームで引き分けたUAE戦は中途半端でした。

特に本田選手と香川選手は自分の力で打開する意識が強く、中央に集まって周りとの連係がうまくいってなかった。

 

おそらく、何人かの選手は

自分たちのやりたいこと

を優先させていたか、前からの癖が出ちゃったんだと思います。

 

今回のイラクとの試合は、まだまだ完成度は低いので、うまくいってないプレーは多かったですが、それでもゴール前の攻防や攻めにいった選手のポジションの穴埋め、狭いところでボールの繋ぎなど、やっぱりアジアでは強いなと思わせるプレーが随所にありました。

 

試合ぶりでは圧倒はしていないけど、自力では圧倒しているなと感じる試合でした。

 

ロシアW杯はサッカー日本代表の大きな転換点になる

前回のW杯のときのザッケローニ監督は日本人の文化に寄せてくれてました。

 

だから、今回の記事で何度も引用した本田選手のコメントのように、

 

  1. 僕のやりたいこと
  2. 僕らのやりたいこと
  3. 監督のやりたいこと

 

という話はここまで出てこなかったと思います。

 

ザッケローニ日本人が得意で、日本人が求めるサッカーをしていました。

 

でも、勝つことはできませんでした。 

 

 

ハリルは僕らは悲しみに暮れたそのブラジルW杯でアルジェリアをベスト16に導いています。

 

アグレッシブで泥臭くて、勝負に徹し、チームが一つになったときの力を信じた素晴らしいチームでした。

 

ハリルの前のアギーレもどちらかというとザックのサッカーを引き継ぐ形でチームを作っていたので、ハリルがやろうとしているサッカーは日本のサッカーの歴史の中で、とても大きな挑戦です。

 

日本が世界で戦いに出るときに、「世界を驚かす」という言葉を幾度となく耳にしますが、

 

ロシアW杯までに今挑戦しているサッカーの完成度が上がっていけば、

 

世界を驚かすことはできなくても世界を脅かすことができるサッカー

 

ができるんじゃないかと思います。

 

僕は、

 

ロシアW杯は出られないかもしれない。

出れてもいい結果は出ない。

 

という悲観的な予想をしています。

 

それだけ、この苦手への挑戦は難しいものだと感じているからです。

 

できるなら、ザッケローニにもう4年やって欲しいなと思っていました。

 

しかしながら、先月の戦いぶりからは一転、今回の試合でかなりハリルのやりたいことに徹底している選手たちの姿がありました。

 

オーストラリア戦はアウェーでうすが、コンディションも上がり、ミーティングとトレーニングを重ねる時間もあります。

 

またここからどれくらいの変化があるのかを楽しみにしながら、オーストラリア戦を観戦したいと思います。

 

 

 

このブログは日本がW杯で優勝するまで続きます。

 

※選手のコメントは以下のサイトから引用させて頂きました。

sports.yahoo.co.jp